シャングリ・ラ あるいは東電OL殺人事件 田中濯

シャングリ・ラ あるいは東電OL殺人事件 田中濯


シャングリ・ラ あるいは東電OL殺人事件 田中濯

道玄坂地蔵のまえに立つ女ありて身体からだを売りし三十代

一度きりくるしみて死ぬ初春はつはる円山町まるやまちょうのくらやみのした

さすたけの男女雇用機会均等法 産まぬおんなのおしろい白し 

隠れなく時雨(しぐ)るる東京電力のエリートとしてせいまっとうす

切り込みの深き渋谷の谿に降る雨はあなたのびんをぬらして

朧夜にわれら聞きたることもあらん神話となりし放尿の音

ファザコンがすなわち近親相姦を招いたという憶測あわれ

三月の桃荒(すさ)みおりベケットの『並には勝る女たちの夢』

五十代ばかりを客に選びおりペニスに薄き精液が湧く

あきらめは男社会で生きること凍るダム湖にとりぽつねんと

肉うすき拒食のひとをついばみし男らはいまもシャングリ・ラに遊ぶ

ありふれたミソジニーもつ我なればオオバコの葉を踏み立ち去りぬ

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「作品 2011年6月24日号」の記事

  

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