第10回詩歌トライアスロン 選外佳作①

第10回詩歌トライアスロン 選外佳作①

三詩型融合作品

イン・ザ・ダーク 児島 成

(陸の端に着いた時 日が沈みかけていた 門の先には太陽の路 別の門の先には月の路 それがどうした どうでもいい事だ

夕暮れの景色に溶けていく鳥はやがて瞼の裏側の闇

どこかへ行きたかった
埠頭のコンテナ
積み木遊び
何かを思い出す度
何かを忘れた
夏の大三角の下
風に吹かれ
風が冷たくなると
みんな消えてしまった
航跡の泡(あぶく)に似て
何も残さないのか
真夜中過ぎに湾を出た
独りになる と
あなたはそう約束した と
譫(うわ)言(ごと)みたいに

壁の時計の針が止まっていた 黒い波の上を這う灯火を避けながら ずっと海を見ていた筈だが 両腕を失って倒れた 水に沈んで翠(みどり)になった 王余魚(かれい)の近くにいた 断面 明日忘れていなければ闇の中で

(どこから来たのか どこへ行くのか 誰もいない登山口のドライヴインから海が見えた

瘡蓋の下を流れる朱い血の記憶辿れば類縁の門

死の世界ではなく
太古の朱雀たち が唄いながら待っていた
だから火口に向かって
その先に何があるかなんて気にしなかった
熔岩に咲く百合の言葉で話すのを聞いた
キャミソールの下の肩胛骨が輝くのを見た
あなたが憶えている限り私は生き続ける と
妖しい絆を感じ
暫く一つだった
火は生命を奪い 生命を生み 生命を育む
*は知らなかった
*は無口になった
言葉を忘れ始めたからだ
鳥 は火口を下りて行った
触れられない闇の中に
鳥たち がいた
いたるところに
断面があった
断面だらけだった
全てが断面だった
水平の断面 垂直の断面 斜めの断面
時はあらゆる断面の歓喜であり
断面鳥 は始まりから終わりまで闇に潜み続ける

急速に冷えていった 光の印象のみが定着した平面を眺め 絶望 と どうして と*が問うと 美しいから 絶望である事が何故美しいのか
あの夜 弓形の湾を見下ろす山の中腹の家で窓ガラスが震えた 入港する大型船が見えた 母 だった王余魚が 絶望 と 沖が朱かった 風の中で朽ちていく家が堪らなく厭になり 山を下りた 干物臭い商店街を通り抜け 暗くなるのを待った ポケットには小銭だけ フェンスの破れ目から線路に忍び込み そのまま突っ走った ろくでもない事をするために
蔓荊(はまごう)の紫色の花を追って行った 悦びの花を 群生は足下で途絶え 黒い砂は燃え尽きた 石の骸だったか 波の音がくぐもった 歌が聞こえなかった

(どこから来たのか どこへ行くのか 誰もいない港町の四つ辻から海が見えた

懐かしい磯の匂いが濃くなったガラスの向こう魚類の顎(あぎと)

スナイパー エキノコックス

。先週木曜、破られた約束。
きらいな奴ばかり目につくので
生き甲斐のある人生だ
君と画面の中に逃げ込んで
生存確認電話も無視してるるる
るるる、なってるよ、電話、
銃撃戦
弾丸(たま)が無くなって
困ってるるる
おどおどしてると
私が撃ち殺されました(あーあ)
乾いた眼球が言うことを
きかずに
小鳥が飛んでい く
を無視しつづけるるる
倒れた私の体の上に青空が置かれて
きれいですシャボン玉したい
で、でもよかったと
一瞬おもう
これでもう
人を撃ち殺さずに済むのだ
その次の瞬間に生き返って
銃の代わりに
フライパンを握っていて
なぜそうなるか誰も知りませぬ
相変わらず
空はきれいです(ため息)
結局ゲームやっても
おもんないし
ぐうたらのび太くんになって
スマホとにらめっこして
眼球が網目で脳を洗っているよ
画面の中
ちぴちぴちゃぱちゃぱ
ねこが踊って
時計が溶けていく
うどんな生活
学校に行けば
私の机とロッカーがある
私の家には私の部屋がある
でも、どこにいたらいいのか
わからな
「いー」
立ちすくむ
救いがないことが嬉しい

足元が地面に染み込みそうに
なる体内循環デボン紀の水

「ロープでくくるんだってさ。」
「なにを?」
「私の首さ。」
死に方は教科書には載ってない
夕暮れ爆撃機がるるるる
泣きそうな顔して背伸びする
あくびを我慢してるだけかよ
どんなに優しい人にも
見たことない顔があるるる
正しさとは自分を信じる事、
だそうです。
透明オレンジの視界
標準を合わせる
「宿題はちゃんと出したほうがいい」
「そうだね、君の言うとおりだ」
ドッヂボール(ちにてんてん)
でも
ドッジボール(しにてんてん)
でもいいです。
君が正しい。
正しさとは自分を信じる事だ。
そうです。
引き金をひく
イカサマが正義になるために、
また明日がやってきます、

裸体 仲原 佳

帰りは遅くなるから、と彼女は言った
ネイビーの軍服を身に纏って
夏に十キロやせた彼女にとって服は大きすぎ
その童顔と相まって少年兵のように見える

零れぬよう火を見ていてと言い残し彼女は二度と戻らなかった

雪遊び合わせ鏡の少年兵

僕は火の番をし続ける
幻の灯台
霧が出てきた
この季節には珍しい、濃い霧

今日の海岸付近は、曇り時々スノーノイズで、穏やかな気温となる見込みです。午前中は石灰の空が広がり、気温は摂氏100e×cosπ度前後で過ごしやすいでしょう。しかし、午後になると一部で硝煙が広がり、日中の気温はやや上昇して華氏11×51度になる見込みです。酸の雨の心配はないため、屋外でのイベントやお祭りを楽しむのに最適な天気となりそうです。

校庭の白線スノーボールアース

旧石器時代ところにより濃霧

もういいかい
まあだだよ

もういいかい
まあだだよ

もういいかい
……霧笛の音

裸体ごと包み込みゆく星の影

酸の雨かくれんぼうはもう終わり

それでも彼女は戻ってこず
便りさえ途絶えた
が待ち続ける、パンを焼きながら

材料(1斤分)
強力粉250g、砂糖15g、はちみつ15g、バター15g、塩5g、牛乳180ml、ドライイースト3g
材料をミキサーで捏ね、出来上がった生地を30℃くらいのあたたかい場所で60分間一次発酵させる。生地を二分割して丸め、15分室温で休ませる。さらに成形をし、40℃ほどで60分間二次発酵したあと、200℃のオーブンで約30分焼く。

1500Lの冷凍庫には750斤の食パンを収納できる
60kgの裸の人間を無理やり押し込めた正方形の箱ならば
25人分は入るだろうか(ただし比重は1とする)
6枚切りにした750斤のパンを毎朝一枚ずつ食べたとしても
食べ切るのに十二年かかる
25人分の人間を食べ切るのに必要な時間は
おそらくそれよりもずっと短い

猟銃の湿りや魔女を狩る季節

パンのみで生きていこうよ謝肉祭

うんざりするほど長い冬が終われば
鐘、祭り、それからすぐに
、来る ヒナゲシの季節

予報士の告げし神託冬終る

方舟のポストカードの届く夏

パンを焼く
彼女を待つ
火は絶えず燃え続け
霧笛は役目を終えても
震え続ける

が忘れられても

灯台も灯台守もいなくなりどこにも行けぬ海が佇む

ただいま、おかえり

おかえり
ただいま

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