鳥瞰図 石松佳
長袖の服を着て
あなたの人格も重ね着をする、
そんな朝が
痛ましいほど好きだ
けれども
あれは
鳥瞰図
薄い布で
目隠しをされた
あなたにとって鳥は透明だが
本当の鳥は有色であり
羽の影を落とした土地の
紋様と色彩を身体に刻んでいるものだ
花が終わるときと同様に
鳥は死を以て透明となるのだが
あなたは地図を見つめたままで
霊魂不滅説を信じている
いろいろな服を着たひとびとのなかでもとりわけ
青くて若い女の自撮りの姿がうつくしい
水溜りに気をつける
木立の下を自転車で抜け
光る紙を
好きだった写真を
くしゃくしゃにして
屑籠に入れる
それにしても
たくさん
散らばっていて
あれは
落ち葉だ
わたしたちはただ
落ち葉になりたかっただけなのでは
なかったか
ハンドルをきり
散らばっている、
星間にひびきわたる
擦れ合うような
騒音に
あなたは心を
傾けたまま
幼い秋を駆け抜ける