rhythm is not takt 斎藤 秀雄
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眼を渡す 甘き唱歌の 海を
裏声の 砕きし
鉄に焦がれて 血の凱風の 海の妣
丘去る楡に 水芭蕉 笑みて口なし
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日には 漉返し 向日葵
橋守 なつかし
白鳥が死ぬ 塵を掬へば 日のなきがらへ
名の王国 稚児の抜殻 口ひらき
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鳩放つ 婚姻の
方舟や 白客船の
兄抱くは 猛火に
秘色の鴉 折る歯
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古き罠待つ 空中都市の
手窪の 囚人に
路地の 鳥の車掌の
吐息の電話 お下がりください