スエター 岸田 祐子

スエター                

岸田 祐子

 


粉々に踏まれる落葉山の道

蝋燭の炎の二つ滝凍る

霜融けてきて階のきらきらきら

厳寒の足音荒き息の音

一歩づつ歩くしかなし笹子鳴く

水洟の垂れる山頂もう少し

片目から涙こぼれてくる寒さ

羊毛の赤いスエター赤い穴

句碑歌碑の文字くつきり日脚伸ぶ

冬帝とずつと一緒にゐて一日

 


岸田祐子(きしだ・ゆうこ)

「ホトトギス」同人。第二十回伝統俳句協会新人賞。

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