夢の中のきみと雨 窪田 政男
スマホ越しきみの部屋のカーテンは半分ひらいて向こうには雨
六月の雨は止まないスマホなど知らずにきみは逝きにき、これは夢
雨は降りチョコをはさんだクラッカーの音やわらかくきみを見ている
その音をきみもひとりでいるときに思い出すだろうと聴いている
遠くから見ているだけの前髪のさくりとゆれてどこかためらう
ひかりはきみにためらい雨粒はとどまりやがていっきに落ちる
塩味が少しだけ効いたクラッカーって子どもっぽいの大人びてるの
きみは応えず紅茶をふくむ窓ガラスすこし濡れてる六月の雨
便利さがぼくを蝕むきみはまだ十円玉を握りレポに立つ
六月にいずれはぼくも濡れるだろうiPhone片手に握りしめて
青あじさいひと世の花と思うとき酸性雨降る未来の方へ
六月発売予定、第二歌集『Sad Song』より