第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立受賞連載
忘れられた怪獣
尾内 甲太郎
音楽のとぎれた朝だ
昨夜は羽毛をなすりつけあったね
いくら鳥の角度を信じていようと
手は鳥の糞ではあたたまらないよ
たとえ翼という息吹のなか
はぐくまれた頸椎であろうとも
およそ私にとっては
遠い星のせせらぎを遡る翅虫だ
日の出とともに鳥はほぐされたかい
骨格は夜の重さを忘れたかい
消えた半円、もういいころあいかな
はちきれんばかりの血を放とう
星じゅうから嫌われた血を
より濃く、濁った血のなかへ
愛されているはずの血の奥底へ
放出 汚されるのは鳥の涙だけだ
耳たぶのこまやかなふるえは
混ざった血のせいではあるまい
風のなか半分の豹が吠えているだけ
きっと鯨たちの目醒める光とゆらぎ
三角形、ふたたび音楽をはじめよう
またたきはときどき忘れてもいいから