大道大乗歩行―芸能芸術起信考―【八】
御母逝く~あいぎこえのうた~ 男波弘志
きのふ死に今日死にいまを死ぬ螢
わが四肢は蓮華ぞ母よ乗り給へ
こんこんと螢を放つ母の臍
臍の緒のやはらかきこと誰にも言ふ
いちめんの母いちめんの芒原
秋蝶の影あやとりの中通る
銀漢のどこに居る母わが描かねば
わが骨をつつむ肉塊天の川
枯木中われは手を出し日を浴びぬ
母が死に秋が死に冬始まりぬ
羊水の聚つてくる蛇の睡り
シリウスの側に点く星わが描く星
母われにわれ母に絡む臍の緒で
執筆者紹介
- 男波弘志(おなみ・ひろし)
昭和41年(1966) 真冬 出生
北澤瑞史 創刊 俳誌「季」 元会員
岡井省二 創刊 俳誌「槐」 元同人
永田耕衣 創刊 俳誌「琴座」マンの会 元会員
現在 俳誌「里」 同人
既刊句集 『阿字』(田工房)
合同句集 『超新撰21』(邑書林)に入集