「海中火」のための素描
斎藤 秀雄
王子らはブリグ族を殺戮しはじめた
おお、おうっ、牡牛。……牡牛が……牛が……しが……。いる、牡牛がいる! クシャトリヤたちのなかに牡牛がいて、いて……見る! 牡牛は見るものだ。目から見る。目から見るが翔ぶ。ミルクを見る、牛のミルクを見る、牛乳を……。
王子らは女たちの子宮の胎児さえも虐殺した
牛乳、乳……を見る。目から翔ぶ見るが、乳を見る、乳も見るものだ。乳が……。翔ばす、矢を。翔ぶ矢、弓兵から、から矢が、白くっっっっと、と、翔ぶ。白く弧を、鋭く矢……子宮胎児。あっ、飴色の……胎児……ほそながくのびる。
逃げた女の一人は胎児を百年のあいだ腿のなかに隠した
腿。ほそながい腿……に、しまう、胎児っっっを。ほそながい太ももに。ヒマヴァット〔雪に覆われた〕、ヒマラヤ〔雪の住処〕、ヒマラージャ〔雪の王〕。おお……寒い……雪山の王へ逃げた、女、っっっクシャトリヤが探しにくる……。
子は腿を裂いて姿を現した
も腿、腿、から生まれた子はアウルヴァ〔腿生まれ〕という名で知られ……た、ももう、ももう……牛の目が見る……矢が乳から翔ぶ、白く甘い飴がほそながく……赤い光……。
真昼の太陽のように王子らの視力を奪った
目に……目から翔ぶ見るの矢が焼けた……熱い……ホットミルクはほそながい。女の乳、牛の目、矢、鋭く白く翔ぶ刺さる……女の腿。腿から見る。破裂する飴色の目……。
アウルヴァは諸世界を滅ぼそうと決意した
神々もろとも……滅ぼす。憤怒から生まれた火が、ひが、いくつもの世界を滅ぼすろぼすうろぼろす。子宮のなかで寝て聴いた、胎児や男や女のなっ泣き声をぉぉぉ……魂に入ってきて、きて満ちた、ふっ憤激が、この聖者、聖仙の魂にぃ。
祖霊たちがやってきて思いとどまるように説得した
先祖の霊、それ、祖霊、くる、白くほそながい祖霊ぃ……。言っていた、祖霊は、長すぎる生に、命にうんざりして、クシャトリヤにわざと喧嘩を売ったのだと……うんざりする……長い、長すぎる白い棒が牛から出てくるミルクが見る。
誓いに背くことはできない、よいようにご配慮を
飴色の聖仙アウルヴァは……腿から生まれた腿生まれ、憤怒の火を抑えこめばみずからを焼き尽くすだろうと、応えたのだった……みずか、みずから、を……アウルヴァと世界たちの……どちらのためにもなる、めにも、めにもな、見る。
宇宙は水からできているから水に投げ入れよと提案した
すっ、すべては、水から水からできている……から……世界はどれも水から水からできている、から、水を焼けば、世界を滅ぼしながらも世界は滅びることはない、と言うのであった……みずみずしい、飴色のミルクが出てくる……乳から。
火は海中で水を食べた
ひ、火が、投げこまれる、大海に……そこはヴァルナのすみかであった……象によく似た怪魚に乗ったヴァルナ、白い象……に似ている……ひッ火が……水を食べる、食べている、見ることは食べることであったか……翔んで食べて見る。
火は巨大な馬の頭になり口から火を吐いて水を食べている
この馬は、馬には、見覚えがあるぞう……頭には目がある口がある……目から矢が、口から火が、翔んで、水を食べる馬を乳が見る……白い……象の鼻はほそながいだから象は怪魚である。馬は……白くほそながい火を吐く乳である。
※『マハーバーラタ』はボンベイ版とベンガル版を底本としたKisari Mohan Ganguliによる英訳(https://www.sacred-texts.com/hin/maha/)を参照した。