第8回詩歌トライアスロン三詩型鼎立奨励賞連載
ミノタウロマキア 髙田 祥聖
牛鬼の手の造りこそ人に似てかなしや我等握手ができる
蜘蛛の巣に鈴を懸けよとははそはの聖母は告げり十二月七日
こゑのみが冬を震はす弔ひの誰もが正装誰もが真顔
火すなはち叡智すはなち罪科なり煙のやうにコスモスは揺れ
鳩は芽になるまえの芽を啄めりちはやふる神は死ねぬのに
理性とは梯子の傾斜角に似る ああ、延命の話でしたか
立礼の踵を二つくつつけてそれを私の心臓とする
咳と咳交換したる教室の椅子もその影も四つん這ひ
鳥が風を追い抜くこともあるだらふ乙女よ躊躇はず線を引け
振り向けばそこには朝があることを識りつつ撫づる夜の蜘蛛の巣