ジーナ・フォイロなる凶鳥のこと 斉藤 真伸

ジーナ・フォイロなる凶鳥のこと 斉藤 真伸

ド右翼のハインラインがジャンキーのP.K.ディックを助けたように
裏庭の野良猫のこと セネガルのジーナ・フォイロなる凶鳥のこと
ぬかるみに足をとられて口をつく 俺は世界を愛していると
おろしやのヴィイのそれより重そうな瞼が夜の鏡をよぎる
わが妻の机の上にさみしげな北欧ミステリの表紙画見ゆる
憎しみも差別もすべて娯楽なり乱世は近し春の夕暮れ
シジフォスのごとくこの日も“紙の本”なるものいくつか買って帰る
積読の山よ哀れなわたくしを今日も黙って許しておくれ
腸の根腐れ者の意地なればヴィーガニズムに同調はせず
春川のごとき車道を挟みつつ測量技師は天地を測る
雑談の区切りのたびに雉子が鳴く湖畔に近きわが友の家
厄神が真夏の街に立っている靴のかかとを踏み潰しつつ
くたびれた靴にて征かんこの町を舞台にしての我が『ユリシーズ』
ペンギンも飼育係も断頭台(ギロチン)へ/われは生きたやフーシェのように
朝まだき頬に触れるは樊噲の矛に斬られた風の一片

プロフィール
1971年山梨県生まれ。常磐大学人間科学部人間科学部社会学専攻卒業。1995年、「みぎわ短歌会」に入会。2013年に第一歌集『クラウン伍長』(加藤治郎監修)を書肆侃侃房より刊行。

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