第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門受賞連載
前頭葉の色づくころ 尾内 甲太郎
サンドバッグに砂がないなら人間のサンドバッグも砂ではないよ
誕生日は知らないな 死は君の生そのものたまに結実だけど
コーヒーでたちまちいたくなるおなか地球を水の惑星と呼ぶ
鉛筆と黒えんぴつの違いまだわからずアイスミルクを買った
真夜中の子音を燃やし若白髪ぬいて朝まで母音でいよう
さかさまに雨は降るだろう名は消えて画像は消えて清潔な島
くちびるへハンディファンをおしつけてせめて自身の加害者であれ
ポリエチレン袋が回りはじめたら前頭葉の透明なとき
愛してはいなかったんだ 響孔の色を覚えていなかったから
信号機はひらかれつつも青のままどこまで嘘を暴かれたのか
魚にとり死とは何かを訊ねれば〈氷のように硬い光〉と
背に羽のはえてくるのは鳥でありかつ鳥ではない人のさだめよ
どの音も星の掟が赦さない君の名のたび唇はふれ
乳首みな脱走をしてうつしみは鳥の渡りを見送る荒地
牛乳と思い乳飲料を飲む気にしなければ平和な国は