第9回詩歌トライアスロン三詩型鼎立受賞連載
眠りの南で
尾内 甲太郎
味はわからなくなって
青空からベッドが降ってくる
逆さまな亀のはるかな末裔として
あるいは水晶髑髏の歯ぎしりとして
ベッドが 数万と数億のベッドが
あらゆる車の上へ
ときたま蟻の巣へ 降ってくる
知恵の輪から知恵が無くなった夜を
あなたは思い出せますか
神と闘って勝ったことのある者だけが
頭のない躰からイヤフォンを抜きなさい
人をあやめるのにうってつけの土曜日
的外れなスパゲッティだけ茹でていよう
ほんとうの銃弾は病巣を傷つけてしまう
から でもいま口にできることだけを
もうあらゆるベッドの落ちきるころあい
銃口はまだどちらへも向いていない