連載第6回
中指
鈴木 康太
石鹸に手を伸ばそうとしたけど
縮みゆく体では
もう手元の潮水しか
触れられなかった
あなたの足元には
どんな雑草が生えてきますか
その草は体を貫きますか
痛いですか
頑丈な部屋にいるから
台風が来るとわくわくする
私が、台を思い浮かべるとき
あなたが、風を思い浮かべるとき
今も幸せ 私たち
迷子になるために
生まれました
アナウンスで流されるために
生まれました
よく響きます、私は思います
よく響きますね、あなたの名前、年齢
過去
海岸につけた目薬で
夕焼けは火傷の痕
海の中
倒れることはありませんでした