春のあなたへ
髙坂 明良
俺の存在はいつ削除されてもかまわない嚆矢となりてきみが御胸へ
さよならがいつも含まる言葉には「またね」で継なぐ夜の砂浜
あやかしの波打ち際を二人して歩くあしあと風が埋めてく
ていねいに光の束を束ねたら春のあなたの黒髪でした
命からがら逃げたっていい全身で愛の形のイルカになって
飛魚が見えるんだ闇の飛沫から月はいつものように味方だ
あやふやな言葉でしましょうピンポンは朝陽のネットにつかまりました
嬉々として触れた指から片足立ちの白鳥砕けて散るや光は
死に際の枕許には風ばかりそして返らん花の岸辺へ
「さよなら」の「さ」を抱きしめて黙らせる濃霧の中で輝くきみは