連載第1回 結ぶ 亜久津 歩

結ぶ
亜久津 歩

自らの口を自ら塞ぎ
足の指まで固く握って
誰にもわからないように
ひとりで泣いたことのある人が好きだ

せめて普通になりたいと願い
奥歯をすり減らして戦って
当たり前に与えられた人の言葉に
立ち尽くしたことのある人が好きだ

たんぽぽのような善意は殴れない
目を見て噓をつくときの
湿気ったウエハースの歯ざわり
どうせみんなと違うなら
唯一の 何かを持っていたかったよね

狂うことも 慣れることも
忘れることもできずに
靴の紐を結ぶ
あなたがそこにいると
わたしは知っている

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