短歌九首
小川 優子
まだ初夏のひかりは眩し人生を右折してみて気づく景色の
雨上がる道戻りつつ昨日の悦びひとつ幾たびも抱く
女なること悔やまねどうたかたの日々詩を産まぬ子宮の虚ろ
裏切りと呼ぶほどでない過ちか蛙のうたがきこえてこない
えいえんのいのちを得たる心地して事後のからだを丁寧に拭く
サーターの香り思ほゆ唇をどちらから先に寄せしあの夜の
初めての蝉を聴きつつラーメンをいつまでも飛べる体に流す
十九時の空の青さを喜びて二つグラスに麦酒を注ぐ
深からぬ眠りなるべし夜ひかる蝶翅ふたつ合はせてしづか