


死声1の5
森川 雅美
私たちのあえて魂の畔と呼んでみる
その輝きは常に帰れない場所への道だから
許されない歩みとして呼ばれ続ける
すでに消えていく幾重もの人の声の響きあい
明滅する段丘のまだ生きている足音を耳骨
まで晒し常ならぬ境界へと移動する
傾いた地軸に燃えるもろもろの踏み込みへ
の狭間に滴り落ちる微かな悲鳴と重ね
弱まる帰路の方角に少しずつ傾く
その輝きは常に帰れない場所への道だから
許されない歩みとして呼ばれ続ける
奥深い悲しみへささやかに橋渡す小さな淀みを
瘡蓋として注ぎずれていくいわれなき段差
まで晒し常ならぬ境界へと移動する
傾いた地軸に燃えるもろもろの踏み込みへ
のさらに先に見えなくなる掌をつなぎ
どこまでもささくれ立つ地面の緩い起伏を
その輝きは常に帰れない場所への道だから
許されない歩みとして呼ばれ続ける
なぞり失われた種子に兆すささやかな
囁く声の残る消えた都市の方角に
まで晒し常ならぬ境界へと移動する
傾いた地軸に燃えるもろもろの踏み込みへ
続く真っ直ぐな細い道に躓きながら深く連ねる
色褪せる魂の畔に佇む背中の崩れていく白日
その輝きは常に帰れない場所への道だから
許されない歩みとして呼ばれ続ける
眩しさを少しだけ開く狭間に撓み
遺漏する記憶を少し拾い上げ消えない火に
まで晒し常ならぬ境界へと移動する
傾いた地軸に燃えるもろもろの踏み込みへ
晒される方角へ零す道の途中に追われ
外れていく道先にさらに繋げるなお生き
その輝きは常に帰れない場所への道だから
許されない歩みとして呼ばれ続ける
続けなければならない時間のなお先の
風のそよぐ道の途中の暖かき光に包まれる
まで晒し常ならぬ境界へと移動する
傾いた地軸に燃えるもろもろの踏み込みへ
聞きなれた声が奏でる緩い旋律に兆し
重なるいくつかの笑う人たちの面影
その輝きは常に帰れない場所への道だから
許されない歩みとして呼ばれ続ける
私たちの静かな日であったと呑み込む水や
切り出されるささやかな土塊を零し彼方の支え
まで晒し常ならぬ境界へと移動する
傾いた地軸に燃えるもろもろの踏み込みへ
つづく段差のある狭い土地に集う
まだ柔らかい声の聞こえる記憶の奥底
その輝きは常に帰れない場所への道だから
許されない歩みとして呼ばれ続ける
引き裂く轟音に振り返る先の一瞬を穿ち