第11回詩歌トライアスロン 三詩型融合作品選外佳作①

第11回詩歌トライアスロン
三詩型融合作品選外佳作① 

体 中田真綾

目覚めると体を失くしていた
どこに落として来たのやらと、しばらく探したが、ない
しっかり躾けておくべきだったと思いつつ、眠る
起きる頃には戻っているだろう

朝方、ぼんやりとしていて明るいのか暗いのかわからない
仕方がないので、手すりにつかまり食卓まで歩いた
完全に愛想をつかしたらしく奴らは本当に帰る気がないらしい
味のないハムエッグを食らいつつ、私は旅に出ることにした

サンフランシスコの寝そべっているアシカを見る
あれではないなと思った
私の体はあのような微笑みを浮かべないはずである

かわいい形をしていたと思う
春の風がこそばゆい旅路を無作為に歩く
雲を突きぬける感覚が頬を撫でている
いつからこんなに高いところに登っていたのだろうか

見おろせば菜の花の海がひろがって私の足がなくなっている

私にも翼があった、あった、のに。(すがりつくように海をながめて)

犬には天使が見えるらしく、いつも歩道橋のうえを覗いている
天使を素通りしてたどり着いた百貨店の白い試着室にこもる
地上はすべて菜の花に覆われてしまったみたいだ

白い試着室で色んな体を試してみる。こんなにもつめたい鏡のまえで

でも、なんか分からない形Where is my body? 炎は消えて

ここではないどこかにすべてがあるような気がした
汗を垂らしながら、夏をしばらく歩いた
真っ赤な舌でアイスを舐める
この団地の奥に倉庫があって、右から5番目が私たちの秘密基地だった

飛行機を見つけるたびに指をさす ←この一連をいつも、だれかが

蝶とまる団地に給水塔がある

揚羽蝶が何度も足場を確かめるように止まる
羽が取れないように前かがみになってつまむ
そっと、そっと、と言ったのに取れてしまう羽
私たちは秘密を共有していて、運命に従順なままである

二段ベッドは君が上、私が下だった。器用な君が落下するのを望んだ。

どこまでもはしる電車 もうないよ。もう、この街に。電車はないよ。

君を置いて、走り続けるみたい。I’m going crazy right? 力がでない

車内に蜻蛉が飛んでいて、追いかけている
秋の電車は街を超えて、どこまでも走る
車窓からフェンスが、フェンスの向こうには月が、見えた

月光に学生服は汚されて

「また、明日」と手をふる窓の外がわの夜道に月がころがっている

寝ころがる記憶が眠気をとおざける。痛み止めなら棚の上だよ

それは記憶ではなく事実であるかは確かめられなかった
夢はいつも白黒であり、終着駅に辿り着いてしまう
私は笑っている少女たちのアルバムを見つけた
Can you hear me and see me now?

トンネルになって雪に埋もれる
映画の英雄たちが待っている街まで来たみたいだ
兎たちは震えて、耳に言葉を入れようとしていて、可哀想だった
(中家・堀田・野村)

ジョハリの窓辺 巽野

1 HIDDEN

少しだけ早めに着いて夕暮れの待合室で雨を見ていた

一匹の獣が森を走っている。人の姿を借りて、深い森の奥に住む、美しい人に会いにゆくところ。獣は彼のことがとても好きだったから。

床に跪こうとする獣に、彼は優しく椅子に座るよう促した。
同じ机で、銀のフォークとナイフで、揃いの皿から共に食事を取り、
同じ言葉を話して、隣で名前を呼ぶことを許してくれた。
そうしていると獣は時々、自分が獣であることを忘れてしまう。
そうして自分が本当は人間ではないことを思い出して、そのたびに獣はひどく苦しんだ。

カーテンの上から抱きしめるように愛す お前やお前の過去を

カーテンの向こうにお前が立っている
影は小さくて、お前は幼い
カーテンの向こうに問いかける
抱きしめさせてくれないの?

白いレースに触れようとした手を叩き落として
嵐、と
お前は言った

屋根のない森で、私は
嵐の夜を眠ったことがない

伏せられる瞼 眠りにつく前のあなたの暗い部屋を想うよ

2 BLIND

チョーカーの留め具を外す 無自覚だからこそ言えることばっかりだ

雨は銀色
優しい檻は
人々の侵入をやわらかく拒み
私を永遠に閉じ込める

姿見の中で目が合う あなたからあなたを守る術の幾つか

金色のあなたの髪を撫でていた
あなたの寝顔を見ながら
例えばだけど、
あなたに見えない寝癖をあなたに教えないことって、
欺瞞だろうか

あなたを壊したくなくて
あなたを傷つけ続けている

目を覆う手に触れてみる 白杖のようにお前の名前を呼んだ
コーヒーにミルクを入れてそれはもう別の飲みものだと笑われる

※元原稿とは一部異なる部分があるかもしれませんが、ご了承ください。

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