着のまま 小池康生
剥落の壁さらに剥げ照紅葉
奔放なコスモスを混ぜ摘みにけり
秋時雨ふはつとラップ掛けておく
民謡の声の伸びゆく崩れ簗
崩れ簗すぐ立ち直る村の水
秋の川あやふき形に石を積む
新蕎麦や紺の暖簾に支流の名
月光のいつぽん道を経由する
棺には着の身着のまま菊人形
茶の花の雨招ぶ風に飛ばさるる
小池 康生(こいけ やすお)
一九五六年大阪市生まれ。
「銀化」同人。「奎」代表。
句集『旧の渚』(ふらんす堂)。
第二句集『奎星』(飯塚書店)が出たところ。
俳人協会、現代俳句協会所属。