10のpiano preparation
prepubescent piano
革命の全てが終わっていた朝もぼくらはきっと「おはよう」という
picaresque piano
二時間の午睡を町と呼ぶ君はおやすみ、今日をはじめないため
prepaid piano
大屋根をあけてすべてを委任せよ ゆうべのカレーの具材をすべて
preposterous piano
ご希望の質問にだって丁寧に答えてあげる「いいえ、ひとつも」
polaroid piano
陽光の緑に変わる一瞬が弦へと融けてゆくのを待てよ
piacular piano
ハンマーが振り下ろされる速度さえ無邪気なきみを想像させる
prepositional piano
ぼくだけの前置詞として剥き出しにされてしまった 足を撫でれば
prepossessed piano
もう一度かけ直すから。切り終えたばかりの髪を見ながら
picturesque piano
原色のコサージュひとつ落ちている地下道 それを夏の海と呼ぶ
prepense piano
ささやかな嘘の数だけ鍵盤のすきまに世界が生まれるだろう
作者紹介
- 中島裕介(なかしま ゆうすけ)
1978年兵庫県小野市生まれ。短歌制作者。
第一歌集『Starving Stargazer』
『もしニーチェが短歌を詠んだら』
ウェブサイト:Staving Stargazer!