仲は良くしてゐたい 永山 凌平
仲は良くしてゐたい 夜の向かうから窓光らせて電車は来たり
〈ほろよい〉の缶握りつつあかあかと君は告げたり婚姻のこと
反つてゐる付箋紙(人に好かれるといふのはどういふこと)剥がしたり
セーターのほつれた糸を引つ張ればほどけゆくから鋏で切りぬ
食べ物は残らないからいい 部屋のドアの閉まりが悪い日がある
洋館の窓いちめんの白蓮が記憶の中にひらき始める
頼みたる日本酒呷りつつなんだか会へばいつも悔しい
中空を反りたるままに落ちてゆく木蓮の花 記憶は苦い
撚り糸のごとき河川よ感情の果たてを吾は予感してをり
閉まりゆく扉の奥で明星のごとく光りき君の指輪は
ありふれた別れのことば 咲きかけの花買つてきて花瓶に挿しぬ