天井譚38 森川雅美

【7月12日掲載】自由詩 天井譚

天井譚38 森川雅美

ぼくたちの背をつかむ大きな手があると、
陽だまりに置き去さられる唇があり、
はや慣れた嘘ざむい上方からの陽光が、
あられもなく射しこみ手足を伸ばす、
もう転生しない個体としてぼくたちの、
なけなしの住処もけがれ果てるから、
今はさよならの挨拶を告げるでもなく、
ひがな一日を立ち続けたままの姿勢、
コミットするぼくたちの迷う環状線から、
すでに忘れかけた人たちのささやきを、
ゆっくり侵食する目線をくぐり抜け、
欺く底辺が破損する滴として落下する、
ぼくたちの訪れぬ陽光に似るのなら、
骨は崩れたとしてもちいさな塊となり、
現世の沁みくらいの声をあげ続ける、
天井までの届かない距離を測りながら、
消えぬぼくたちの傷が柔らかく撫でられ、
破鏡になる知らせがきざはしを外し、
白道から滴る光の滴が足元に描く波紋、
限りないサークルの連鎖になるため、
ぼくたちの首の根は沈黙し痛んでいる、
目は異なる方向からなら輝きが違い、
すみやかにふてぶてしい面立ちになり、
盲目な人たちが横合から口をはさみ、
ぎりぎりの狭間で聾する耳鳴りが響いて、

                              

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