舞台 来住野 恵子
みどりの頭蓋を捧げ持ち
日没へ向かう
魔除けのローズマリー一枝
鼻腔から瞳に抜け
まばゆく香る
瞬きも凍る
真冬の地殻変動
葬ってしまえば
底なしの〈いる〉が雪崩れ込む
荒波のタトゥー
西空は破れ
木の葉のように乾いて燃え尽きる
皮膚から灰の港へ
〈いない〉熱砂を運び
嵐を待って吹き飛ばされる
砂漠の航海
祈る手のフラジャイル
砂の数より星の数にうなされ
煌びやかな不眠の闇を蒼く明滅する
いかにも供物はおまえだ
〈いる〉〈いない〉地上の無言劇
いずれささやかな祝砲が鳴るだろう
献花なら雪のひとひら
ほら
ことばばかりの台本を
みんな食べてしまった
山羊が
てんてんとしろい夜空をあるいている