第7回詩歌トライアスロン三詩型融合部門受賞連載 『少女たちⅠ』 草野 理恵子

第7回詩歌トライアスロン三詩型融合部門受賞連載
『少女たちⅠ』
草野 理恵子

(紫の木)

木が紫色になったね
私たちは白か黒の服を着て
マッチを取り出した
私たち特有の脂が添付され
炎が高く燃え盛った
湖に足をつけながら後ずさりし
仰向けで浮かんだ
紫の木は燃えた
黙って見ているのは姉で
妹たちは飽きて違う遊びを始めた
私の頬を炎が照らし痛かった
今生まれたばかりのように思った

私たち特有の脂が添付され紫の木燃え生まれたばかり今

(剥製館)

私たちは手をつないで
剥製館を回った
手は不思議だ
どんな形にも変わり
冷たくも温かくもなる

私たちは冷たい剥製の手に手を合わせ
目を瞑った
愛した人を思った
その人は死んだ動物の剥製に似ていた

見上げると
角のある動物と目があった
瞳を失った穴だけの目が
深く私に微笑んだ

見上げると角ある剥製と目が合う穴だけの目が深く微笑む

(教室)

教室の真ん中に白い紙を敷いた
その上に誰か寝る
仰向けに
輪郭をなぞりその人型を取り
教室の端に貼る
何かのいじめ?
それ
わかんない
儀式?
嫌なら丸めて
丸められるのも何だか嫌
それなら捨てて
捨てられるのももっと嫌

耳の中に熱いゼリーが注ぎ込まれたように
何も聞こえなくなり体が熱い七月

耳の中熱いゼリーが注がれて聞こえない体暑い七月

(アイドル)

ドアの叩き方で誰か分った
強弱をつけて歌うように叩く
一か所高い音の出る場所を最初と最後に入れる
最後にして最初のアイドルみたいに

私たちは連れ立って白鳥を見に行く
彼女は白鳥に聞く
私が誰だか知りたい?
白鳥は白い靴下を見る
彼女は白鳥に自分の服を着せる
普通の秋を過ごしたいねと
そのまま帰る

アイドルは白鳥に自分の服着せる普通の秋を過ごすと帰る

(イソギンチャク)

私は早く目を覚まし
緑のカーデガン
チェックのスカートをはいた
はいた
吐いた?
時々

ベンチに座ると
薄い太陽の光が差し込む
爪先を入れる
足先から太陽色になる
皆起きたのか
黄色のベンチに並んで座る
皆頭を低く下げる
白いうなじを同じように見せ
まるで人間ではないように並ぶ
イソギンチャク

皆頭低くうなじを見せ座る人間じゃないようイソギンチャク

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