わたしのいない間 暁方ミセイ
食べかけのチョコレートを
みつけるでしょう、
それはひどく余所余所しく、恐ろしげにさえ見えるはずだ
生活のなかから
現れた物が、
全部途中のまま
先端という先端を妙に光らせて
ひとつひとつくっきりとそこにあるのを
わたしのいない部屋で
あなたは、見るでしょう
そのチョコレートを
なぜ食べないのか
(それはわたしの生命の途中にあるものだからだ)
先刻、
畑を焼いているのを見たよ
煙が夕方に立ち込めて青く鈍り、
火のなかに新しいお話が象られつつあった
柿の色が沈み、雲がどんどん落ちてくる風景の上に
わたしはたいして鮮やかではない
実感を張った
肌みたいに鈍感に張って
あしたこの世界を出て行くことを思う
それからまた
続いていく日があることを
天と繋がった心臓の糸で知る
肌に隠れる
遠山を夜叉が踏み鳴らし
秋、秋、暗い秋