



第11回詩歌トライアスロン三詩型鼎立部門奨励賞連載第2回
空間
ひらく/とじる 中原 佳
【空間、ひらく
雨、夏の
少し遅
れてやってくる
常に認識より現象は
それは水槽だった
わたしはヒレを靡かせた
進化をやめた
鳥の羽ばたき
星座盤の内側の
夜を跨ぐ
履きつぶしたスニーカーで
逃げた
認識をすれば
それはあるから
泡、、
降り注ぐ
銀貨のように
あなたは言った
遊ぼうと
夜はまだ
誰のものでもないから
空間がひろがる
黒く
月も影もなく
荒廃して
強くなる雨
祭壇と手術室が同じだとして
空白
卵のように
如何なるものも受け入れて
裂け目から
血が滲む
撲った
何度も
何度も
憎しみに
心が支配され
醜さに
打ちのめされた
わたしは来世に存在している
出口も入口もない
では、おわりはどこか
ZZZ←ZZY←ZZX←ZZW←……←NAA
↓ ↑
AAA→AAB→AAC→AAD→……→MZZ
金魚ZZZを模倣する金魚ZZY
金魚ZZYを模倣する金魚ZZX
金魚ZZXを模倣する金魚ZZW
・
・
・
金魚AABを模倣する金魚AAA
金魚AAAを模倣する金魚ZZZ
一つの意思に誘導されているようで
無秩序だ
時間の影響も受けずに
泳ぎ続ける
金魚たち
泳いでいる
無数の
色とりどりの金魚が
天井に淡く灯される明かり
満たされている
つめたい液
高さ220センチ
縦横90センチ
納骨堂のような
それは電話ボックスだった
アクセルを踏み
無意識にハンドルを操作した
強い雨が降っていた
夏の始まり
帰る家はもうない
帰り道だった
夏の終わりで
雨はやみかけていた
無意識にハンドルを操作し
アクセルを踏んだ
それは電話ボックスだった
書庫のような
縦横90センチ
高さ220センチ
ぬるい液に
満たされ
天井に明かりが淡く灯る
色とりどりの
無数の金魚が
泳いでいる
金魚たちは
重力の影響も受けずに
泳ぎ続けた
調和していて
一つの意思に誘導されている
金魚AAAを模倣する金魚AAB
金魚AABを模倣する金魚AAC
金魚AACを模倣する金魚AAD
・
・
・
金魚ZZYを模倣する金魚ZZZ
金魚ZZZを模倣する金魚AAA
AAA←AAB←AAC←AAD←……←MZZ
↓ ↑
ZZZ→ZZY→ZZX→ZZW→……→NAA
では、はじまりはどこか
入口も出口もない
あなたは前世に存在している
美しさに
打ちのめされ
喜びに
心が支配された
何度も
何度も
抱いた
割れ目から
血が滲む
如何なるものも拒む
境界のような
墓標
子宮と冷凍庫が同じだとして
雨はやみ
繁栄して
太陽の光の下
白く
空間がとじていく
昼はもう
誰かのものだから
眠ろうと
あなたは言った
金貨のように
降り注ぐ
鱗、、
追う
それがあるなら
認識してしまう
時計盤の外側の
朝に覆われ
真っ新な日傘をさす
進化をやめない
馬の嘶き
あなたはヒレを靡かせた
それは水槽だった
認識は常に現象
より少し遅
れてやってくる
夏の雨
とじる、空間】