





第11回詩歌トライアスロン三詩型融合部門候補作
とうめいを見る
松浦 やも
知る前に戻れはしない 想像の花筏に想像で乗り込む
板書をする。だいじな用語はオレンジのペンで、そうでもないのはシャーペンで書く。
先にオレンジのところだけうめる。持ち替えに時間をつかうだけでいやになってしまう。板書をする。
想像で話したことがあって、想像はむかしの硝子窓だった。
佇んだ。向こうがみえる。すこし景色がゆらいでいる。向こうが、見える。
想像で土地の話をした。たくさんのひとが住んでいる。ここ二百年くらいで革命があった。そして指導者が死に、その土地はちがう思想の土地になった。とおもった。ここ二百年くらいで革命があった国がたちあがった。
おおかみの剥製を被れたとしていつまで受け入れられる毛皮
板書にもどる。ここ二百年くらいでほんとうに革命があった。硝子窓に向かって立つ。指導者は死んでいなかった。硝子窓にもたれる。その土地はずっとその土地だった。
硝子窓をこする。硝子窓に息を吹きかける。硝子窓をこする。
ふれたならまたうすくつく指紋たち 肯定できるままでいるなら
八月、ときこえた。目を伏せる。ひかりを呼び出す。硝子窓のゆらぎにあつまってくるひかり。部屋のなかのひかりは、すこしランダムになっていた。
ゆらめきをよろこんでいる。こもれびのようだとおもってしまったならば。
打ち水をしにいこう。はだしのまま外に出る。足が地面にくっつきそうになる。外から硝子窓を見る。外からでもゆらぎがわかる。バケツとひしゃくを手に取る。
ばしーん。
地面と足がはなれる。水を打ち続ける。目を伏せる。打ち水をわたしにまかせる。踊る。
とうめいのつぶにひかりは屈折しひろがる わたしとしておもえば
※
funeralove
卒業
†
とほくからこゑをふるはせながら読む運命論者の弔辞がきこゆ
その
意味をすくひあげるまへに
きみの恥骨のはしきことばかりに
ふれてしまふ悪癖
しかもなほ、
雨
が自意識を湿らせつづけてゐる
ブルー・スク
リーンの液晶画面
がさいうに1,000個ならぶ密室
ここできみといふなまへのないをんな、
と
ぼくといふいうれいと
で空中戦をしよう
よ
嘘をつくのはもうやめよ
単色アイコンの
裏垢は削除されつつ眠る薔薇
ロリヰタの増殖やまざる冬夜かな
感情の標本を焚べる冬の火事
あを月が黒衣纏へば狂れる母
冬薔薇が退屈さうに咲く写真
薔薇ひとつ抱へて死にたいとかやめよ?つまんない!もつとたのしいことしよー?
††
らんぐどしやぼろぼろ零してくひまくる 少女ゆゑ 少女ゆゑ 少女ゆゑ
神学者がつくつてくれたくれかはいい椅子にきみが
すはるのをまつてゐる
まに
ぼくが倫理を拡げてゐるひどく
ひどく
散らかつた机のうへに
品のない
苺まみれの
装飾/増殖)された
パフェがひとつ届く
痙攣する
ウェイトレスが着てゐるあをい
かはいらしい制服
の胸のあたりには
きたない言葉が書かれてゐる
ひどく
床にミルク・ティーが零れて
しまつて … … …
†††
即興で天使枝毛をつま弾けり
冬ざれや自撮り盛れざるアプリかな
冬ざれてツインテで首吊るイメージ
ショッキング・ピンクで満ち満ちたる空虚
山茶花のはねが舞ひちる… ぐう天使
だからぼくは
――――――○すうさいど
を中絶したのでした
とほくから
まだ
(こゑ)
運命論者が悼辞をよみあげるのが
きこえる
遺灰塗れの
きざはしをのぼりおりする
えいゑんに/
えいゑんに/
すると
運命論者がよみあげる
やけにながい悼辞が
とほくなつたりちかづいたりを
くりかへす/
くりかへす/
意味を銀色のスプーンで
丁寧に掬つては
零す… … …
ぼくが非在を撫でる姿を見てきみは蛙化現象発動しちゃふ?
しちやダメなことほどきみとしたいなの 告解室で焼肉だとか
ほほゑみは残酷すぎてとほすぎてぼくが欠落してゐて キュン死
それをみてゐた
きみといふなまへのないをんな
が
ぼくといふいうれいを
みながら
くすくすとちひさく
わらふんだ







