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遡上する鮭の歌   戸田響子

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遡上する鮭の歌   戸田響子

押すな
後ろから押すな
可能であれば横からも押すな

ふるさとへ帰る列車は満員で
お土産の酒饅頭が昇華する
人々の皮膚にしみ入り
血流にのり
T細胞に殺された
落ちている特急切符
酒饅頭は殺された
落ちているおにぎりの海苔の一部と
一本のささくれ立った割り箸が
燐光を発して床に横たわる
ペットボトルは皮をむかれて
リサイクル
ペットボトルの蓋を集める
理由はすでに忘れてしまった
から揚げのにおいがしてくる
アイスクリームの棒だと
思っていたら
モロッコヨーグルの棒
少し小さい
割り箸が破裂

月光に照らされる岩間の鮭の
死骸
B♭ E F B♭
ルー ルー ルー ルー

クロワッサンの層をはがして
隙間には目には見えない子犬たち
鳴き声をあげ
バターは値上がりしていたよ
鍋敷きは夜の間に逃げ出して
ふるさとへ帰る
胸の内に花鰹を躍らせながら
鰹節も少し値上がりしていたよ

ワイパーがすごい早さで動いてる
同じリズムで鰹節でも削りましょうか
そこに着くまで削りましょうか
ついでに歌も歌いましょうか
B♭ E F B♭
ルー ルー ルー ルー

新巻鮭を背負って走る
背中から声が聞こえる
内臓がない
棒鱈が並走してる
内臓がない
ポケットの中の麩菓子が折れてゆき
見る見るうちにダンゴムシ
丸くなっても丸くなっても安全じゃない
新巻鮭で棒鱈を殴りつけ
棒鱈で新巻鮭を殴りつけ
急カーブ
線路のあげる悲鳴にのって
弁当の上蓋につく米粒を
ひっとつひっとつ瞼に飾る
真珠のように
輝いている
何よりも米が大好き
集まってくる無数の仏像に
すべてを打ち明け
その日は家に
帰った

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