ひまわりの夢   戸田響子

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ひまわりの夢   戸田響子

ペットボトルはピタリとしたポリスチレンの衣服を脱がされると
それでは、また……は、ないですよね
お元気でお元気で
と、乾いた笑い声をあげて落ちていった
忘れないよ忘れないよ
と、いうのはもちろん嘘だけど

どこからか醤油が焦げるような
もっというと焼きそばかたこ焼き
どちらかというとお好み焼きなのかもしれない
そんなにおいをふくんだ風が吹いてきた
ああ、夜ごはんの時間なんだなあ

へし折った割りばしが手に突きささり小さなとげが今も抜けない

何度も何度も肌をかさね合わせてきたよね
白いワンピースはじっとこちらを見つめている
食べこぼしたしみ
おそらく醤油
もっというとみたらし団子のタレ
あの団子の串は折ったんだっけ
いや、手が汚れるから折らないよな
先っぽにタレがついてるんだから
タレが手についたら、いやだなあ
さようなら
ワンピースがささやいた
串は折ったんだっけ
ワンピースは黙ったまま
やがていつの間にか姿を消していた
忘れないよ忘れないよ
と、いうのはもちろん嘘だけど

ヴィッヴィッと点滅ののち点灯し自転車置き場に夜が置かれる

「このプラスチックのところが割れているので直りませんね」
「どうなりますか」
「このプラスチックのところがこっちの部分とかみ合ってそれで
開く仕組みなのでこのプラスチックのところが割れているともう
だめです」
「と、なるとどうなりますか」
「このプラスチックのところが割れていなければこっちの部分と
かみ合わせて固定すればなんとかなりますがこのプラスチックの
ところが割れているので」
「つまりどうなりますか」

道端に捨てられている傘がみている大輪のひまわりの夢

忘れないよ忘れないよ
と、いうのはもちろん嘘なんだけど

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