読む書物   斎藤秀雄

1225s第8回詩歌トライアスロン・三詩型融合
次点作

読む書物   斎藤秀雄

紙の束ねられたものを  紙に手を    春まけて
あなたは読むだろう。  のせて言葉を  紙に
読む手と        つぶやけば   手を置く
読む目のとよみが    洞深くまで   夕べかな
いくつかのフローを   暗きたぶの木  町をでて
流れが流れてゆく    橋の灯を    町へ
同期しないで      あびて木屑は  入りたる
スピードで       川下へ     春の川
半透明の断片たちは   流れつつ手を  風下の
透明で         反らせるあなた 森
ひろびろと       図書館の    ひろびろと
共有図書館のフロアが  窓にあまたの  巣箱かな
しらしらと       花びらが    夕桜
書物たちが       張りついて死の 橋近ければ
がちゃがちゃと     くちびるの色  しらしらと
白くもすきとおる    真夜中の    灯台の
あったりなかったりの  安全灯に    点滅したる
点滅を流している    照らされて   蕨かな
めかめかと       あなたの影は  夜の更けて
めかきらない      点滅の風    まさに
きらめきが       水晶の     きらめく
手から目から亡霊たち  なかに翼を   冷奴
水晶の         ひろげたる   墓や
カセットテープから   折り鶴の目の  過ぐ
だらしなくたれる    みひらかれたる 雨の蛍が
テープがひらひらと   覚め際に    火をたらす
透明な点滅をする    蹄のおとを   水馬の
ローリング・ストーンズを聞きとめて   蹄
束ねている蹄が     首から覚める  きれいに
にごる空間を      夢と思いき   洗はるる
ひろげてひろびろと   旅人と     八重葎
内なる図書館を     してゆく墓に  雲は
あったりなかったりの  あじさいと   盆地に
点滅の書物が      書物が濡れて  耳ひろげ
生まれるまえのように  置かれてありぬ ひまはりの
めかめかして      窓外の     赤い
白いフロアに      白くなるまで  時間を
時間を乾かしたままで  窓拭けば    摑みけり
忘れてしまう      日向に闇の   たぶの実や
ページをめくれば    色の罅入る   姉は
みえなくなるのだから  てのひらの   忘るる
しらしらとした欠落の  向こうに沼の  姉の顔
海綿質をとおってくる  夜があり    稲妻の
のが亡霊たちだとすると どんな名前も  とほる
読む目は忘れてしまう  忘れてしまう  流体レンズ
海綿質の空間を     大波に     なれ
空間の遮蔽幕が     船はのまれて  月や
隠蔽している空間が   昼前の     火の
それぞれの       静けさとなる  鈴の
内なる書物たちを    内なる港    内なる
かさかささせて     階段を     マエストロ
半透明の断片たちの   おりて深さを  そぞろ寒
透明な断片を再構成   知ることも   覚めて
してみればかの湿った  なく傘だけが  架空の
架空の書物たちは    湿る地下道   母の閨
すれ違ってゆく     海の名の    短日の
一日二センチのスピード 町は棺の    油の鳥と
共有図書館のすかすかの かたちして   すれ違ふ
海綿質の空間は海綿で  すべての辻に  名草枯る
いっぱいの       すれ違う鳥   海は
部屋たち        雪道の     ざらつく
名前          さなか遺産の  名前なり
の位置を指定する    ごとく石    空間の
ことができない     ありてさだかに 雪は
内なる図書館だからだ  定まらぬ位置  両眼に
べつの空間だったのだ  踊り子の    くぼみけり
亡霊たちはどっちにも  亡霊たちが   音楽の
いたりいなかったり   交差する    氷柱を
音楽の         舞台にきつく  たれて
蹄たち         ピヴォットの跡 影の形

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