連載8回 おかえりなさい 亜久津 歩

連載8回
おかえりなさい
亜久津 歩


夏の早朝のまばゆさ
濡れた植物の匂い
まだ彩度の低い空と
受光する積雲と

今日も暑くなりそうですね
薄いごみ袋を手に
泡のように肯き合う
最期かもしれない一日

社会 のなかで
汗ばむことを恐れなくなった
風が止むとき
悪臭を放ち滲み出る己れが
まぼろしでないとしても
風が吹くとき
毀れ落ちるものが
まぼろしのままであるように


わたしのからだが
わたしのもとへ帰ってきた

水を飲ませて
綿を吐かせて
丁寧に洗ってあげよう
沁みないように手当をしたら
安堵に満ちた寝室で
思う存分 眠るといい

もう大丈夫だよ
どれほど美しい皿にも二度とのらない
明日は何処へ行こうか

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