傾く日に   渡辺玄英

傾く日に   渡辺玄英

眼の中に日が傾く 
傾く風が傾く人が傾く 
(吊り下げられた(風景はまるくゆれている 
それはここが 
埋立地だから(というわけでなく(ゆれていた 
まっ白な校舎だから(というわけでなく(ゆれていた 
眼の中に傾いていく日がぐらぐらと零れていく 
傾きながら 
遠ざけられていく風景の中で 
(風景はまるくゆれている(いない 
 
(遠くからいくつもの足音が近づいてくる 
影は階段を上らなくてはならない 
(風は吹かない(声はなかった 
屋上まで上らなくてはならない 
(遠くからいくつもの足音が近づいてくる 
地平線は傾く(だろう(もろともに 
空が灰色の海になるときがくる 
(声はなかった声は(どこにも 
眼の中に海が傾く(あふれそうだ 
どんどん近くなる(あとすこしだ 
傾きながら 
 
小さなガラス瓶に草花が挿してある 
澄んだ水のなかに根がひろがっている 
白い根がからみあって

タグ:

      
                  

「作品 2012年8月3日号」の記事

  

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress