十七曜じゅうしちよう危殆きたい 依田仁美


十七曜じゅうしちよう危殆きたい 依田仁美

木火土金水きひつかみ日月かよう大地おおつちに嫋嫋生きて三分の二世紀

ひとびとは大地凸部を丘と呼び蝟集星占俯瞰いしゅうほしうらふかんいとなむ

ひとびとが時を競りつつ巡るに日と日の隙に十夜が割り込む

潜り抜け跳びこす人生ひとよそのめぐり井然せいぜんの七曜煩瑣の十七曜

前半は哲学まみれ後半はITまみれおれの人生

ところどころ捩れても速き破竹川喚び渡りし将門のてい

十七はおれの吉数その数の鉛筆を研ぎ小箱にたもつ

逢魔どき意志と力がかなしめばこの世のはい異界酒いかいしゅを差す

予の四周にじりじり夏は極まりてりょく十数種ほとほと猛る

それぞれの背に追い撃ちを浴びせつつ雨群うぐん堂堂大手町制圧

都会には直方体の反射光 西より北へ救急車ゆく

のまくら背骨の上に寝る昼は太陽面に過去をねじ込む

不意か不図かかみそり皮膚を割きてのち血の浮くまでを心待ちなる

工学に海魔かいま割り込む悪夢など十七曜の危殆といわん

叫びとはしょせん虚仮こけとて獣口もときに沈黙朱なる沈黙

連弾が悪循環をいざなえば指関節は触れ振れれおる

花の寺過去世かこぜの奥のみどりより鯉魚りぎょ湧く池の夏の波瀾や

作者紹介

  • 依田仁美(よだ・よしはる)

1946年1月25日生まれ。守谷市在住。生涯の大半を日立製作所で費やす。「短歌人会」「現代短歌舟の会」「硬式短歌サイト・不羈」

に拠り、短歌を研究的に制作。日本空手道制護会員、現代歌人協会員、日本短歌協会常務理事。歌集:『骨一式』『乱髪~Rum-parts』『悪戯翼(わるさのつばさ)』『異端陣』、作品集『正十七角形な長城のわたくし』『あいつの面影』、秋には『依田仁美(よだじんび)の本』を北冬舎より刊行予定。

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「作品 2012年8月3日号」の記事

  

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