人魚軍上陸戦 斎藤秀雄
人魚の一個師団が沖に沸き立つ青空
うつ伏せのヴァイオリン焦げ遠景の木霊
鏡の花束抱へて砂に刺さる農夫
孔雀が哄ふ薄墨の島
筆おろしの童貞ら鱗に千切れ紡ぎ歌
左手にバクーニン右手にチーズかまぼこの人魚スナイパーだ
いにしへの空中体操いきいき家族
視線が売られ尾びれが壊すマーケット
産卵人魚なめらかな産道をバスがくる
鉄の橋も肉の橋もやつれて水の誕生日
斎藤秀雄
1974年生まれ。第6回詩歌トライアスロン野村喜和夫個人賞。
論文に「形式の観察/観察の形式――批評理論のルーマン」(『誌』vol.2、2019年)。プネウマ句会主催。ネプリ「きりんねこ短歌合評会」発行人。