狭庭の底    落合勝人

  • 投稿日:2022年05月07日
  • カテゴリー:俳句

狭庭の底    落合勝人

来し路を音無く濡らす忘れ雪
水温む底に埋めし和人形
亡き人と我のあいだに水芭蕉
竹とんぼ風死す空をただひとり
墓石の滴り父が名をなぞる
百年の忘却嗤う震災忌
病室の母染髪す初紅葉
湯冷めより先に冷たきオリオン座
寒鴉狭庭の底を打ち守る
凍蝶は動かず命の重たさに

落合勝人(おちあい かつと)

1969年生まれ。埼玉県出身。編集者。仕事の傍ら思想史を学び、
19年、法政大学大学院政治学研究科博士後期課程修了(政治学博士)。
21年『林達夫 編集の精神』(岩波書店)刊行。

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