春夜 岡田ユアン

詩岡田130329

春夜 岡田ユアン

おぼれてしまわないかしら
 
まといつく春は ぬるく
かきわけても どこまでもぬるく
皮ふをおかして すすみゆく
 
愛しているのは
さくら色がとけだした
うす紫のすげない夜
 
川面を風がわたると
しだれるように言葉がこぼれる
 
銀の光をひろいながら
わずかな窪みをもとめて
気配をまつものの肩ごしに
はこばれてゆく
 
ようやくうまれた均衡に
触れてはいけない
 
ゆるみはじめた細胞が
いらなくなった思い出を手放す季節が
あえかに過ぎてゆくまで
 
触れてはいけない

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