千年 和田まさ子

和田詩131025

千年 和田まさ子

夕べ、バスから降りようとすると
何かが体から出たので
車内に置き去りにしてきた 
 
これまでの千年は明るかった
いくつかの夢をみたが
その結果
いまは芯から冷えている
 
降りると大きな泰山木があった
時間のピリオドのように白い花が咲いている
 
近郊のバス停は思案する人であるかのように
曲がっている
白い未来の
これからの千年を
どうやって過ごそうか
バスを降りたそこは知らない町で
先を歩く人が振り向くことはない
彼もまた自分の千年を考えている
一本の木のようになって
前かがみ
屈服
 
遅れているわたしの未来
やってくる時間にもそれぞれの速度があり
わたしのはスローテンポで
いつもだれかに叱られている
 
持ち物を放棄せよ
掛け声で耳がつぶれる
 
ずいぶん遠くにきた
魚の匂いがする坂道で
わたしは壊れかけている

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