走高跳 ―――ハビエル・ソトマヨルに  来住野 恵子

来住野詩2014

走高跳 ―――ハビエル・ソトマヨルに  来住野 恵子

拮抗する脳天の焔を越え
宙の扉をあけてゆく
息をすべて吐き出せば
腹のそこからふつふつ湧いてくる
あのえもいえぬリズムになる
・・・わずか数秒の気の遠くなるような助走の果て
 
タン・タン・タ・ターン
バーの斜め前
速度を上げ
Jの字の曲線を描きながら瞬時のダンス
慣れ親しんだ重力と決別するんだ
 
生命の信託
力いっぱい踏みきり
全存在を挙げて神の手をもとめるように
天高く右手を投げ
真後ろから跳躍する
 
おお麗しき背面跳びの王者!
一本の幻を超え絶対の地平へ
天地はまわり
両足を空に蹴り上げいま世界を脱ぎ捨てる
ほしいものなどなにもない
完全降伏した地は雲の匂い
跳ぶものは飛ぶものだ
 

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