天井譚35 森川雅美

森川詩2014

天井譚35 森川雅美

お前はみんな死んでいると頭の近くでその人の声がする、
小さな淀みにはまりよぎる一瞬の風景に巻き戻され、
消えかけた染みとしてあることをもう悲しむでもなく、
排泄されるままの曲がりくねったクラッシュであるなら、
ぼくたちは内部露光として見るまえに色あせていき、
耳元のちいさな虫の羽音にいつまでも裏切られつづけ、
かすかな咳払いとともに雨に濡れて理由もなく寒い、
息を吐きながらずるい目に見つめられ掌から落ちていく、
浮世はうららかな白道であると嘘ぶいたまま釘付けの、
濁る空気に停滞するしぐさでせめて天井で来迎する、
やがて衰えたとしてもお気に入りの位置で目をつむり、
どんどんと遠のいていく人たちのただささやかな団欒に、
はでなカラーで祝う言葉は冷めていて小さな者のため、
高い位置から振りおろされるぼくたちの内部崩壊を、
気まぐれな道草に足引っぱられながらもぼやけていく、
お前はみんな死んでいると引き裂かれる人達の声がする、
手は失われるためにあると時には知らなければならず、
突然の金属音が響き白濁する眼底に向けて罅割れる、
病葉が肩に散り落ちてかすかな重みがあり目がくらむ、
翌日の企みを切り崩すための足さばきを不器用になぞり、
はらからは増殖する腫瘍として血の隅々まで拡がり、
決断する闇夜のエッジを転がる斑のあるひとさし指へ、
浮き沈みするぼくたちの内部破綻を見つめて行き過ぎる、
兆しがのど元を少しずつ圧迫しいつの間にか名を失い、
からまる痛みは舌の表皮に沁みていき悲しい旋律で、
奥の方から虫喰われていき甘い言葉が満ち溢れていく、
うつむく幻影は斜めからの陽光に少しずつぼやけていき、
点滅は語られない鼓動だと静かに体の中心が震えだす、
ため天井から散りゆく安っぽい散華に包まれながら、
とおい場所で皮膚のひび割れる音が耳に痛いほどに響く、

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