幽霊ごっこ   暁方ミセイ

110
 
 
 

幽霊ごっこ   暁方ミセイ

電柱があって、塀の向こうには川沿いの畑がある
その川辺で火を燃やしていて、
ぱきぱきと枝の割れる音がしていた
夜だから、火だけが見えた
それに音だけがしていた
人がいることだけがわかった
そこに人が
いることだけが

夜の街はみんなドアを閉ざしている
歩き回り
足音をたてる

わたしは憧れる
丸い外灯のある玄関と車庫
自転車が二台止められて
まだ十ほどの子どもの足が見えるよ
マンションの窓の
薄水色のカーテンと
移り変わるテレビの光に憧れる
重たいドアの蝶番が動く音と
蛍光灯に照らされる散らかった部屋のなか

亡霊として
わたしの名前を記さない街の中を
うろつく
うろつく
そのくせ
あの川辺の火だけを
本当に見たという気がする

タグ:

      

Leave a Reply



© 2009 詩客 SHIKAKU – 詩歌梁山泊 ~ 三詩型交流企画 公式サイト. All Rights Reserved.

This blog is powered by Wordpress