マルクスだいすき   柳本々々

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マルクスだいすき   柳本々々


マルクスとふたりで乗った観覧車ふるえる右手、そっとつかんだ


わたしたちの遊びはいつもマルクスのひげのなかに手をいれることだった


長い廊下をあるいていって、つきあたりを右に曲がると、壊れかけのロッカーのよこにマルクスが体育すわりでぐったりとしている

3・1
そのマルクスのひげのなかにてをいれてかえってくる


わたしはかのじょのようにふかくてをいれたことはないが、かのじょはてをふかくながいじかんをかけていれていたことがある

4・1
かのじょはそのときマルクスとすこしのあいだみつめあっていた

4・2
よかったの、ときくと、よかったという

4・3
意思疎通ができていたんじゃないかとかのじょはいう

4・4
そのときはじめてマルクスのくちびるやにのうでをしげしげとみることができたの

4・5
それにマルクスはすこしおびえていたようだった


ひげの奥はどうだったのとわたしが思い切ってきいてみるとかのじょはわらってごまかしてしまう

5・1
エメラルドグリーンの矯正器具がみえる

5・2
わたしの姉とおなじめをしている

5・3
姉「あなたのなかにもカラマーゾフがいるのね」


マルクスはまだぐったりとしている

6・1
わたしはときどきマルクスのところにいってマルクスにくだものややさいやなまにくをほおばらせたりしている

6・2
だいすき


次のマルクスはもうこの町内に引っ越してきているという


わたしとかのじょはこの夏、プールにかよいつづけた

8・1
おたがいの筋肉をさわりあっているうちにわたしとかのじょはマルクスを共有できたようなきもちになっている

8・2
もうすこしさわってねといわれる


真夜中にほとんど腐ってしまっているマルクスのもとにいく

9・1
「きんにくのふしぎ」という詩を書くよ、とわたしはマルクスにいった

9・2
マルクスのひげが弾力をもってぴくぴくする

9・21
マルクスだいすき

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マルクスの渦巻くひげにてをいれた少女が貰う勇気の貨幣

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