物語ル椅子   そらし といろ

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物語ル椅子   そらし といろ

 1
雪白のレースで
編んだドレスを
まとうトルソーのための部屋

レースの編み目をつらぬく
壁紙の水色は成層圏に由来して
ジェット気流が圧縮されている

 2
クリアーな夢を覗いた僕が個展の案内状で
手帳にはさんだ瞬間に寝台特急は発車する

 3
水晶の一種であるあまたの眼球

あなたが水晶を見つめると
静電気と虹が細かく衝突を繰り返す
衝撃で漆黒に焦げた一点が瞳となって泉を呼ぶ

 4
目測する
世界の大きさに合わせて
伸縮する
身体に巡るアリスの神経

手のひらへ乗せたScopeが吸い込む

重力の

咆哮

 5
知らないはずの音を汽笛と断定して廃村に居る

 6
枯れ木へ雪が降る音の積もりゆくまま
しな垂れて仄かに温かくなり夜が滴る

 7
すべての形の基本はしずく
枝先へ実る林檎にはじまり
頸骨の支える頭蓋骨へ至る
病のような基本が螺旋する

 8
林檎と聞いた君が連想する
赤い皮
をどうしてかナイフで
リボンを作るように実から剥がす
傍から
舞台袖でたっぷりの沈黙に染まる
深紅の垂れ幕の隙間へ
実の色
と近い感触の鳥が卵を産む

 9
人工的にしなやかな膜を生成する

電灯的な円錐形を太陽と位置付け

眼鏡をかけた神がまばたくたびに

いくつも季節が往来して混合する

 10
地下鉄へ繋がる
階段の出入り口は覗き穴の遺跡
浮上した意識の無垢な認証行為

2015年12月17日 桑原弘明さんのScope展を鑑賞して

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