(動植物の休息を攪拌する) 山腰亮介
動植物の休息を攪拌する
いたるところで
脈うつ
光音の呼応が
夜という夜の瞳孔を透過する
窓の外
枝にからまる卵殻を
閉まらない扉を
かつての友人たちの訪問を
山岳の裾をひるがえす黒衣の太陽のざわめきを
水辺で咽喉を鳴らす生き物たちの悦楽を
頬に蓄えた樹木の予感のまどろみを
飢餓でうめく燐光を
森で 荒地で 川岸で捌かれる
魚の 鳥の 獣の
臓物でうごめくものたちの外郭を
砂塵 煤塵 氷塵の
粒子ひとつひとつに刻まれた
太古の微生物の記憶を目覚ます波動の群を
バスのなかへと紛れこむ
ビルたちの挨拶に秘められた極色の鍵盤を
履きつぶされたスニーカーの弦楽を
靴下を 唇を
鼻腔を刺激する
眩暈のなかに繁茂するコスモスの旋回は
あらゆる標本箱の鍵となる蝶を摑む遍照となる