化物   山口勲

0917

化物   山口勲

夜中に父の財布から抜いた金を
すべてゲームにつぎこんだ
やめた理由は忘れた
抜かなかった夜は金属バットで殴られることを思い
そのまま十二年同じ家に居座った
熟睡したらバットが風を切る音に気づくまい
つまりは殺されたがっていたのだ
それが答えだと信じていた
自動でお金を数えるレジですら一万円札が入るたびに店員がメモを取っていて
咎められなかったのは待たれていたのではなく
彼は語る言葉など持っておらず
私は化物に違いなかったのだと
眠る妻と子を見て再び気づく
この見方のどこまでが真実であるかを信じたくなかったので
それが無駄だと理解するまで人生が始まることがなかった

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