内戦(その2)   野村喜和夫

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内戦(その2) 野村 喜和夫

(線の生成)

俺ら、線、
線の生成、
だが、はじめに点と点があって、
それを結んで線が出来る、
のではない、もしそうなら、
それは死んだ線だ、
俺ら、つねにすでに、
生き生きと線の激発、うねうねと線の逍遥、
そして歌うような線の自律、

俺ら、線、
交差して、結び目をつくる、
かと思うと、すぐさま解かれ、てんでに、
伸展しはじめる、かと思うと、
すぐさま撚り合わされ、和良比、
スパイラル、
俺ら、しなやかで強靭、
しなやかで強靭、
俺ら、線、
線の生成、

(よぎり行けば)

俺ら、この国をよぎり行けば、
見渡すかぎり、
劣化、劣化、
ひとの劣化、うたの劣化、
奴ら、たとえば政治家はみんな右だし、
つられて俗衆も右を向くし、ポピュリズム、
同調圧力、自主規制の箍、
「そういう時代になった」と受け止めるしかないのか、
でも俺ら、俺らも俗衆だが、
絶対にそっぽを向く、
あの昔の、「おっとせいのきらひな
おっとせい」のように、
絶対に、宿痾のように、
そっぽを向く、

ひとの劣化、うたの劣化、
街には、スマートフォン片手に、
昼日中から、「ポケモンGO」なるゲームに興じる奴ら、
大量の夢遊病者さながらだ、しかし、
「強いモンスターがゲットしやすくなる
レベル20になるまでは、単純計算で
500匹のモンスターを捕まえる必要があります」、
忙しいサラリーマンに、それは無理、
かくてブームは終了する、
頭をあげよ、ふたたび空の青だ、
空の青には、静謐な虫のノイズが犇めいている、
地にはゴジラが、
またあらわれたらしい、
踏み潰せ、劣化の街、
のみならず、
欺瞞だらけの集団的自衛権も、
踏み潰せ、踏み潰せ、
いざとなったら、
日米安保も多国籍軍もあてにならない、

だが奴ら、恐ろしく増殖している、
敬虔なウサギのように、
そのひとりが、女だが、自衛隊を閲兵するって?
俺ら、背筋を凍らせ、
跳ぶ、はねる、
そっぽを向く、

*「おっとせいのきらひなおっとせい」=金子光晴。

(メディア城襲撃)

俺ら、跳ぶ、
はねる、
襲う、

ホ、ホナ、ピニョン、
漏れ出すんだ、俺ら、どこからでも、
そして跳ぶ、はねる、
襲う、

今度はメディアの城だ、
あの城を襲う、
なぜなら、城の奴らの役割は終わった、
奴ら、唄を忘れたカナリヤ、
みんな右を向いている、
俺ら、左や後背から、極上の傷をみせても、
奴ら、だから気づかない、
俺ら、風を詰めた袋でもあるから、
内側もない、テリトリーもない、
透明なわらべの脱落のうえ、
散乱する瓦礫のうえ、汗ばむ皮膚のうえ、
甘い丘マシーン、
メディアの城へ、
甘い丘マシーン、
あるいは非局所的脱出、しやがれ、みたいな、
弥勒のぷるぷる、ミルクのふるふる、
ああ、俺ら、
城の奴らのセンスに、
それらナンセンスをふりまいて、
跳ぶ、はねる、
襲う、

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