窓の月の話   カニエ・ナハ

窓の月の話   カニエ・ナハ

ジャズの話です ピアニストの
ビル・エヴァンスの「ムーンビームス」
というアルバムについてお話ししますね
たしか高校生のときに
高校の帰りに、厚木のタハラ(というCD屋さん)で買ったとおもう
輸入盤で1300円くらいだったかな
それからもう二十年近くずっと聴いてる
満月の夜がくるたびにかならず聴いて、
それ以外の月の夜にもちょくちょく聴いてるから
もう何百回も聴いてるとおもう
いつも眠る前に聴いているから
最初の2曲くらいしかほとんど記憶になくて

  うたたねのわたしと渡る虹の橋 ゆりかごめくゆりかもめにゆられ

ビル・エヴァンスといえば
ベースのスコット・ラファロとドラムスのポール・モチアンとのトリオの
「ポートレート・イン・ジャズ」
「エクスプロレーションズ」
「ワルツ・フォー・デビー」
「サンデイ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード」
の四枚が名盤として名高いけど、
同日にライブ録音された
「ワルツ・フォー・デビー」と「サンデイ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード」の
録音された日のその数日後にスコット・ラファロが交通事故で亡くなってしまって、
それから数か月後に新たなトリオとして、
ドラムスはポール・モチアンのままで
スコット・ラファロの代わりの新たなベーシストとして、
チャック・イスラエルを迎えて録音されたのがこの「ムーンビームス」というアルバムで
スコット・ラファロのベースのうたうような、ピアノと対話、あるいは対峙するような
圧倒的な存在感にくらべて
チャック・イスラエルのベースはいくぶん、というかずいぶん、ひかえめで
ビル・エヴァンスのピアノを月の光とするならば
チャック・イスラエルのベースは夜の闇
ビルに映る月の光
イスラエルの夜の闇

  この部屋は冬のひだまり ベッドサイドのペットボトル光る

1曲目「Re:Person I Knew」は
このアルバムのプロデューサーで
当時リバーサイドレーベルに所属していた
オリン・キープニュース氏の名前のアナグラムで
RE PERSON I KNEW
ORRIN KEEPNEWS
いま、生まれてはじめてちゃんと確認してみたけど、ほんとですね
私の知っていたひとへの返信
キープニュースはニュースを守るひと
今日のイスラエルのニュース
「イスラエル軍機がシリア空軍基地にミサイル攻撃か、」
私の知っていたひとへの返信
ニュースを守るひと
ビルに映る月の光
イスラエルの夜の闇

  雪原の白いシーツに横たわりねむるあなたの青い影まで

2曲目は「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス」
このアルバムのタイトルの由来にもなっているスタンダードナンバーで
1940年に発表されたうた、大戦のまっただなかですね
こんな嘘みたいな話だけど聞いてくれる?
すくなくともあなたにはとってもおかしな話に聞こえると思うけど
映画ならまだしもそれが現実にあるなんて
信じられないって思うと思うけど
その日、ダンスパーティーが庭でひらかれていてね
突然どんっ!ってぶつかって「あ、ごめんなさい」って声が聴こえたのね
そのとき、水玉模様と月の光が目に飛び込んできて
そこには上向きのお鼻した夢みたいなひとがいて
曲がもどってきてあたしはどぎまぎしちゃったんだけど
息をととのえて、それから、おもいきっていったのね
「つぎの曲、いっしょに踊りませんか?」って
そしたらびっくりしたことに、そのつぎの瞬間には
あたしの腕の中で水玉模様と月の光が、
上向きのお鼻の夢のひとが、
輝いてるのね
踊ってたほかのひとたちは
あたしたちが床から浮いて飛んでっちゃうんじゃないかって
ふしぎそうな目で見てたけど
あたしはぜんぶの答えと、あと、たぶんもっとずっと先のことまで
もうぜんぶ、わかってたのね

  観覧車は夜の日時計われわれの光を撒き散らして進め

それでいまあたしは
ライラックと笑いとで建てられたコテージに居て
あたしは「そのあとずっと幸せに暮らしました」ってことばの
ほんとの意味を知っていて
あたしはいつだって、
水玉模様と月の光を見ることができる
上向きのお鼻の夢のひとにキスするたびに、ね
といった感じの歌詞なのね
ビルに映る月の光
イスラエルの夜の闇
私の知っていたひとへの返信
ニュースを守るひと
水玉模様と月の光
上向きのお鼻の夢のひと
「イスラエル当局が、ナブルス近郊の
パレスチナ人所有の土地989平方メートルの没収を命令」
占領された川の
穏やかな
二つの土の上に
入植する、
境を
家として確立する
反駁し、
自らを搾取し、
前哨を隔離するための
馬の
炎が上がり
私たちは
ふたたび
私たちの口を、
置き去りにする

  吐く息の月の窓べに漏れ出でてかさなる影の濃藍こあいになるまで

*「Polka Dots and Moonbeams」(作詞Johnny Burke/作曲Jimmy Van Heusen)、2017年1月13日のニュース記事より、引用・参照箇所あり

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