日録  長谷川龍生さんに   森川雅美

日録

日録  長谷川龍生さんに   森川雅美

あなたの頭上を整然とした鶴の隊列が
過ぎいく剛よく響き渡り乱れなくあなたの視界の内側を
幾つもの影となり音すらなくすでに差しかかり病
は直すのではなく付き合いなさいというのは
あなたの言葉だから気づかない刹那の悲しみに追われる
あなたの背を幾つもの背が過ぎていき
飛んでいく鷲の羽ばたきにつづく島島をつなぎ釘
の重さを知る人たちのために行く方を告げろ-
あなたの足の端を一晩の演出の街角が
過ぎいくやがて呪詛にもなるあなたの書き記した言葉の
傷口にも似た目に映らない梁の埃を今に
つなぎ少しずつ弱まりいく小指の先の流れというのは
あなたの切れいく言葉だから冷えた幻視
を放ち誰にもまつろわぬ死者と生者を越えて温く集い
前を行く人のふくらはぎの輝きにいく度も転び生
の果ての先に広がる生暖かい空洞に打たれろ
あなたの頭上を零れる一つぶの穀物が過ぎいく泪
が零れている間あなたの古い精霊に似た蟲と
盲人の目線が静かに干割れていく悲しみに伝い嫌に
なるまで自分と付き合いなさいというのは
あなたの言葉だから伸びる古代の幻想がつづき幾つもの
痛い破片があなたの足下の土地を崩し
半島に向かう眼の矛先に笑う殺意の漂い
を養い失われた記憶の前景を開きかけた下唇に繋げろ
あなたの足の端を報われない者たちが過ぎいく知らない
壁にあなたが触れているのなら椅子も
少しだけ浮き上がり繋がれぬ無数の言葉を
綴じその先に繰り返され波打つ光の淀みというのは
あなたの生のたわみとして灯された言葉
だから誰にも知られていないあなたの述語が空を崩し
様々な色彩は幾つもの引裂かれた伝説に戸惑い死後
も遠い山脈のふもとまで言葉は走り続けろ

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