日々の木精   山下泉

  • 投稿日:2013年05月10日
  • カテゴリー:短歌

短歌山下130510

日々の木精          山下泉

鳥の声ほのかなゆうべ山上の滑車は回る緑もやすため

ことしまた緑氾濫(りょくはんらん)はおとずれて葛原妙子の語尾のはばたき

葉のかげの木苺の実をとってくれた山路の葉影ふかくなるとき

二番目の音高(おんこう)に異和あるらしくいくたびも復習(さら)う鳥の青い朝

うぐいすは声かたむけて海光のすきまに灑(そそ)ぐほそきアリアを

金属の吐息のなかに暮らしつつ木精(もくせい)という音符をひろう

タクシーに乗るときふわと微笑して子は運びゆく薄いからだを

呼ぶときの声の内側にねむたげな「野中寺(やちゅうじ)金堂(こんどう)弥勒(みろく)菩薩像(ぼさつぞう)」

しまりすぎた頭蓋ゆるめるために降るうす雪、驟雨、古代の羽音

いちにちじゅう濡れていた舗道は冷たいと子は青月夜(あおづくよ)かかえて帰る

作者紹介

  • 山下泉(やました いずみ)

1955年大阪府生まれ。「塔」所属。歌集『光の引用』(2005年現代歌人集会賞)、『海の額と夜の頬』(2012年)。「sora歌会」、「神楽岡歌会」に参加。

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