湖北へと     永田淳

  • 投稿日:2013年11月15日
  • カテゴリー:短歌

永田短歌131115

湖北へと     永田淳

湖の面に力漲る暁に小さきハスの銀(しろがね)に跳ぶ

航跡を遥か南に引くわれに琵琶湖の巨き曇天の空

極北を目指す逸りの竜骨(キール)もて70mph(マイル)に水をわけゆく

葛籠尾(つづらお)の崎の松より飛びたてるミサゴの眼に湖上の二人

遠雷が湖の奥より聞こえきぬ秋は謐かに深まりの中

さびしくはないかと不意に問われたり竹生島辺に二人し釣れば

崎を経て湖流は北へ変わるらしわずかな流れにボートを委ぬ

伊吹嶺の近くに見えて歳月は琵琶湖に水をなじませてゆく

千年は瞬きほどの時の間と竹生島の神は言いたり

そうやっていつまでも浮いてるがいいさバウを南へ奔りはじめつ

                                          ※バウ(bow)=舳先

雲切るるあたりに光は漏れ出でて湖へと岸は傾れてゆけり

蹠に波の起伏は感じつつ遠くにも一艇浮きいるが見ゆ

最大であること以上に秘められて人を水辺に佇たしめにけり

作者紹介

  • 永田淳(ながた じゅん)

1973年生まれ。1987年ごろから歌を作り始める。「塔」編集委員、青磁社代表。歌集に『1/125秒』『湖をさがす』。

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